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2.写真とカメラの関係


私は最近、ペンタックスMXばかり使ってデジカメはほとんど使っていません。5月は4回写真を撮りに行きましたが、そのうちデジカメを持っていったのは1回きりです。それに、フィルムで撮った方が圧倒的に綺麗なので、デジカメだけを持って行こうという気がしません。メインにMXを持って、基本的なところはフィルムで押さえて、メモ用として気になるところをデジカメで撮る、というのならば考えてもいいと思いますが。


MXには露出計が内蔵されているものの自動露出はできないので、シャッター速度と絞り値は自分で設定しないといけませんし、ピント合わせもフィルム巻き上げも手動です。1976年発売だから、約25年前のカメラです。私が1980年生まれですから、4歳も年上です。人間でいうとまだまだ若いですけど、カメラでこの歳となると、もう老人だと思います。しかし、それでも充分綺麗な写真が撮れます。

思えば、MXが発売されてからの25年で、カメラはオートフォーカス、自動巻き上げ、自動露出などの機能を獲得して、レンズを被写体に向けてシャッターを押しさえすれば、それなりの写真が撮れるようになりました。しかし、便利になればなるほどに失われるものは確実にあると思います。


そういう「便利な」カメラよりもMXの方に魅力を感じています。私は仕事で写真を撮っているわけではありません。写真を撮る、という行為全体を趣味として楽しんでいるわけです。もちろん「いい写真を撮りたい」とは思っていますが、それだけではつまらない。やはり、その過程も楽しみたい。そういう意味で、現在のオートフォーカス、自動巻き上げ、自動露出の一眼レフというのは、すすんで楽しみを捨てているようなものだと思っています。それに、最近のAF一眼レフって、どんなに高価なものでも、おもちゃみたいで道具としての魅力に乏しいような気がします。

私はレバーを使って手でフィルムを巻き上げて、ピントを手で合わせて、露出計を見ながらシャッター速度と絞り値を自分で設定して、シャッター・ボタンを押す、という一連の動作、さらに言うとそれぞれにしっかりとした操作感のある、これらの動作の繰り返しが大好きです。フィルム巻き上げレバーのギアが噛み合う感触、ピントリングのしっとりとしたトルク、シャッターダイヤルと絞りリングのクリック感、シャッター・ボタンの重さとストローク、布幕横走行機械式シャッターのこもったような音。嗚呼。


それから、これは確実に言えることですが、新しいカメラよりもMXのすっきりとした直線基調のデザインの方がずっと優れています。最近のカメラのデザインは出来の悪い日本車を想起させます。デザインの何たるかが全く分かっていないんじゃないか、という気さえします。人間工学という観点から見ると、MXの直線的なグリップは劣っているのかも知れませんが、今まで持ちにくいと思ったことはないし、遅めのシャッター速度でもブレることは少ない。馬鹿でかいズーム・レンズなんかを付けない限り、問題はないと思います。

私とMXとの間に、便利なデジカメや最近の自動カメラが喰い込む余地など、どこにもありません。


2001年6月10日